タイトル『王様の有意義な午後』

はその日の午後、固まっていた。それも、肉体的にも精神的にもという二重の意味で。
(何故、何がどうなってこうなったの?)
は玄英宮の中庭に座って読書をしていた。天気もよく、陽光が気持ちよさそうだったために丁寧に手入れされた草むらに直に座っていたのだった。
そう、今までのことを思い起こしては視線を自身の足元に向ける。
(どうして、こうなったんだか。)
膝の上には、雁州国王である尚隆がなぜか膝枕で眠っている。

そうして、尚隆の来たときのことを思い出す。ある種の諦めを篭めたため息と共に。

『読書中、か?』
今までにもが何か呼んでいると近づいてくることはあった。だが、時間帯によるせいか尚隆はいつも長居するわけでもなく少し話したら執務へと戻っていく。だからは今回もそうだと思っていた。
『書庫から面白そうなのがあったから。天気も良いし。』
『俺も今、ちょうど一区切りついたところだ。』
この言葉には内心、おや?と疑問に思ったものだ。この時間帯、といっても午後だが尚隆はいつも朱衡に仕事をするように小言を受けているのである。それが、一区切りついたという。まだ、こんな時間帯に?
『何を考えている?』
その思案顔を見ながら面白そうに問う尚隆。そこからが何を疑問に思っているかなど予想はついているのだろうことがうかがえる。また、そのとき問いながらもの顔の触れるように極自然に手を伸ばすことを忘れないのはさすがというべきか。
『朱衡様がいつ呼びにくるのかと。』
考えた結果、は尚隆が仕事を抜け出してきているのだ(注:無断で)という結論に至った。
『くくっ、そうだな、では無謀が来るまで一休みするとしよう。』
『は?』
まさに早業。何の違和感もなく、不審な動きもなくあくまでも自然に淀みなくの膝の上に寝転ぶ尚隆。
そして、気づけばいつの間にか寝息が聞こえているという始末。

そして、今に至る。
最初は驚きから精神的に固まっていた。だが、今はそんなことよりももっと危機的なことに固まっていた。
(足、痺れた。)
尚隆がそうしてからすでに一時間が過ぎているのだった。
それにしても、何故、今日に限って朱衡が尚隆を呼びに来ないのかがには不思議でしょうがなかった。
「尚隆?」
足の痺れも限界に来ているので、起こそうと声をかける。
「なんだ?限界か?」
答えがすぐさま返ってきたことに、しかも妙にはっきりした声で返ってきたのでは少々、カチンときた。
「起きていたな。」
「まあな。」
「なら、どいて。足、痺れた。」
の声音から心境を悟った尚隆はまたもやおかしそうに笑う。そのことがなぜか、の勘に障ってしまった。
「何が、おかしい。」

「いいや。…それより。痺れたのなら俺が退かずとも良い回復方法があるぞ。」

そう言っての膝から体を少し浮かせ、

「っうわ!?」

そのままを後ろに押し倒した。そして、尚隆自身はそのの隣に寝転び欠伸を噛み殺していた。

「何!?いきなり。」

「いいから、そのまま上を見てみろ。」

そうして見上げた空はどこまでも青く蒼く碧く、どこまでも遠く、且つ広かった。
思わず手を伸ばしたくなるような、そんな空をは初めて見た。

「たまにはこうして昼寝するのも良かろう。」

なんだか全部尚隆の予定通りな気がしたが、それ以上に澄み切った空は心地よくそのまま二人は惰眠を貪ったのだった。



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