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なんだか、とても。
…面白くない。 目の前で繰り広げられている光景を目にして。 は、むっつりと黙り込んだ。 友雅の周りに、女房たちが集まってきているのだ。 彼女たちは、友雅との関係を知っていて。 何だかんだと、友雅とのやり取りをからかってくれる人たちなので。 …多分、八割以上をからかっているのだろうが。 それがわかっていても、面白くない。 友雅が、この屋敷の女房たちに人気があるのは知っていたし。 ほかにもたくさん、友雅に思いを寄せている女の人がいるということも話に聞いていたけれど。 その話を聞いたときにも、少々面白くないと思ったが。 今回はそれ以上にムカムカした。 「……ちゃん、…何か…、怒って…る…?」 ひょこ、と。 あかねの顔が目の前に現れて、しばらく黙り込んだあとそう言った。 「────…そんなこと、ないよ…」 しばし黙ってあかねの顔を見つめたあと、は、ポツリとそう答えたが。 あかねは、信じられないと言いたそうに首をかしげて。 「でもね、ちゃん。────目が据わってるよ?」 おずおずと、そう言った。 「…………」 答えに困って、は黙り込む。 それから、何気なく友雅に目を向けようとして。 視界のすみに、女房の姿を捉えて、あわてて視線をそらした。 好きこのんで、面白くない思いをしたくはない。 しばらく、あからさまに視線をそらしたの顔を、不思議そうに見ていたあかねは。 が、目を向けかけた方向に視線を動かして。 「……あぁ……」 納得したような声を上げた。 それから、こっくりとうなずいて、ポフン、との肩に軽く手を置く。 「────何…?」 その行動の意図かつかめずに、首を傾げて問いかけると。 あかねは、こくこくと何度もうなずきながら。 「ちゃんも、やきもちやくんだね…」 どこか安心したように、そう言った。 「やきもち…」 あかねの言葉を繰り返して口にして。 は、なるほど、と、軽く手を叩いた。 もやもや、ムカムカするのは、やきもちをやいていたから、らしい。 「…あれ? でも、ちゃんって、思ってることあんまり顔に出ないよね────?」 納得をして、こっくりとがうなずいたとき。 あかねが、不思議そうな声を上げて、の顔を見た。 あかねは、の顔を見つめたまま小さく首をかしげ。 しばらくして、何かに気づいたようにの手元に視線を移した。 「────もしかしてちゃん、お酒飲んだ…?」 が持っている猪口を確認して。 小さな声で言う。 「…? うん。天真くんに飲めって言われて、断れなくて…」 あかねと一緒に視線をおろしたは。 いまだに持っている猪口を軽く持ち上げながらそう答える。 「ちなみに、どれくらい…?」 答えを聞いて、恐る恐る、さらに問いかけるあかね。 は、その顔を見返しながら、ちょっと考えて。 「どれくらい…、だろう…?」 小さな声を上げた。 あかねが、藤姫やほかの八葉たちとおしゃべりをしていた間、ずっと二人で飲んでいたから…。 「結構、たくさん────?」 考えながら、ポツリと呟くと。 あかねはすっくと立ち上がり。 「天真くん!」 少々強引気味にイノリに酒を勧めている天真を呼んだ。 「なんだ? あかね? …お、、酒終わってるじゃん。まあ、飲め」 酒が入って、かなりご機嫌な天真が近寄ってきて。 の持っている猪口が空になっていることに気づき、酒を注ぐ。 「そうじゃなくて!」 酒を注ぐ天真の頭をパシッ、と叩くあかね。 「…ってえな」 叩かれた場所を手で押さえて、天真が返し。 「…………」 は、注がれた酒を無言で飲み干した。 「あっ、ちゃん、そんな、一気飲み…っ!」 「おっ、いい飲みっぷりだなぁ」 あかねと天真の二人は、ほぼ同時にそう声を上る。 酒を最後まで飲み干したは、コツン、と小さな音を立てて猪口を置き。 そのまま、ゆっくりと立ち上がって、友雅と、友雅を取り囲んで楽しそうにおしゃべりをしている女房たちのもとへ向かっていった。 しっかりとした足取りで友雅たちの前まで移動したは。 「…殿?」 「どうかなさいました?」 不思議そうに首をかしげる友雅や女房たちの顔を見回したあと。 「だめです」 そう言って、友雅に抱きついた。 結構な勢いで抱きついただが、友雅は、余裕で受け止める。 「…どうしたの?」 の顔を覗き込んで問いかけると。 目に涙をためたは。 「女の人とおしゃべりしちゃヤです」 そう言って、ひしっ、と、友雅にしがみついた。 ………酔ってる………。 その光景を目撃した全員が、確信した。 顔色は変わっていないが。 足取りもしっかりしているし、口調もはっきりしているが。 これは、絶対に、間違いなく、泥酔に近い、だろう。 小さな唸り声を上げて、しがみつく腕の力をさらに強くした。 その背中を、ポンポン、と軽く叩いた友雅は。 一瞬だけ、天真に目を向けて、小さく笑い。 「悪かったね」 の耳元で、そう、言った。 女房たちも、くすくすと小さな笑い声を上げながら、に向かって謝罪の言葉を口にしている。 「ヤです」 しがみついたまま、眠そうな声で、もう一度そう言うに。 友雅は小さく笑って。 「…もうしないから」 そう言った。 それでも、しがみついたままのに、友雅は少しだけ嬉しそうに笑う。 そして、のことを抱きしめ返して。 「────このあと、ずっと一緒にいたら、許してくれる?」 小さな声で、言った。 その言葉に小さくうなずいた直後。 腕の力を緩めたは、すやすやと小さな寝息を立てはじめ。 友雅は再び、小さな笑い声を上げて、眠っているの頬に口付けた。 翌日。 友雅の腕の中で目を覚ましたは。 あまりの驚きに、悲鳴を上げてしまった。 …もちろん、このときの記憶は、かけらも、ない。 |