タイトル『Blackdancer3』

Black dancer 3
「あ〜〜!もう! なんなんだよ。あいつ!」
エドワードは大変不機嫌だった。というのも、最近彼の、下宿先に訪れた客人が原因だった。
「まあまあ、兄さん。おちついてよ。」
いつもの如く、興奮したエドワードをなだめるのは、弟のアルフォンス。しかし、アルフォンスもどこか苦笑気味だった。彼の中には、無理もない、というどこか悟りきったところがあるのかもしれない。弟から見て兄は尊敬に値する、がそれと同時に兄の負けず嫌い、というか気の強いところも十分に知っている。だから、先日のことにどれだけ、悔しがっているかも容易に想像がついた。
何せ、初対面の女の子に気絶させられて、尚且つ醤油を投げつけられたのだから。まあ、醤油は新しい容器、開封されていないので汚れはなかった。中身はたっぷりなのでそれなりに痛いのだが。
そのことも兄の不機嫌さを誘うのだが、極めつけは
「なんだって、あいつに勝てねえんだよ!」
そう、彼女、はかなり強いのだ。アルフォンスは、と組み手をしたことがないがそれでも、自分より強いのではないか、と思っている。

「なにを騒いでる?」
そこに渦中の人、が入ってきた。彼女も、なんというか格式ばった言葉遣いが特徴的だ。
一般にいう女の口調とは別で、声にやわらかさというものがあまりない。イズミと話すときもこうだったのでこれが、彼女の普通なのだろう。
「あ、さん。何か用事ですか?」
「……外にまで響いていたぞ。声が。しかも、どうやら私のことを言っているらしいし、な。」
ちらりとあからさまにそっぽを向いているエドワードに一瞥をくれる、
「喚く元気があるなら、今日も組み手をするか?」
「あったりめえだ!!今日こそは一本とってやる!」
と、意気込むエドワード。連日負け続きなので何とか挽回しようと必死の様子である。そんな光景をアルフォンスは半ば呆れつつ傍観していた。
こうなった兄を止められるのは師匠くらいだと知っているからである。そんなアルフォンスに
「今日はアルフォンスもいっしょにどうだ?」
と誘う。


そうして、現在。
幼いころ散々イズミに投げ飛ばされ、否、鍛えられた庭で今はに投げ飛ばされている二人であった。
「っっつぅ〜。…ったくどうなってんだよ!お前の動き!」
「う〜ん。予測しにくいようなそうでないような。」
まったくに敵わない二人は似たような感想を述べる。
「うん?動きは普通だし、予測できないわけじゃないと思うが。」
にやにやと、そう、にやにやと面白そうに余裕を醸し出しつつ述べる
「だあ〜!余裕そうにしやがって!てめえ、心底楽しんでるだろ!」
どうにも気に食わなかったらしいエドワードは吠える。それも仕方があるまい。エドワードはところどころに擦り傷があり、汚れも目立つ。それはアルフォンスにも同様で。
吠えるエドワードに相応に返答している。側からみれば低レベルな口げんかにすぎないのだが。
しかしその一方で兄と違い弟は冷静に今までの彼女の動きを分析していた。
「なんだか、踊っているみたいですね。さんの動き。」
その言葉に、じゃれていた二人はアルフォンスに注目する。
「踊り?そういや、足元とかなんかおかしかったな。」
その一言でエドワードも思い出す。
「足元?そういえば、なんだか跳ねていたような、ステップ踏むみたいに。」

「へ〜、二人ともよく見ているじゃないか。」

突然の闖入者。
「「師匠!!」」
「よう、イズミ。おかえり。」
イズミは定期的な検診へ行っていたのだった。帰ってきて庭のほうから何やら喚いている弟子の声に苦笑しつつそちらのほうへ近づいてきたのだった。
しかし、彼女にも予想しえなかったのは
「なんだい、なんだい。今日はアルもやってたのかい?」
「あ、ハイ。でも、負けちゃってますよ。」
この答えには予想の範疇だったのだろう。イズミは当然というように言ったのだった。

は私よりも強いからねえ。」
と。

「「ええ〜〜〜〜〜!!」」

「まあ、今のイズミよりはね。ところでイズミ、お腹すいた。」
「ああ、そろそろご飯にしようかね。」
爆弾発言により呆然としている二人をよそに女二人は、夕飯の話へ移っていく。
の中にある本能は今、組み手から食事へと移っていたのだった。
「エドワード。」
突然、真剣な様子で呼ばれて驚くエドワード。
「な、なんだよ。」
「成長期が終わってもしっかり食わないと育たないぞ。」
最初の真剣さはどこへ行ったのやら、にやり、と笑いつつは言ったのだった。
「どぁ〜われが、成長期を逃したもう育つ余地もないミジンコ豆か〜〜!!」
といつものように突進していくエドワード。だが、
ズバン!
という擬音語で片付いてしまったのだった。
は突進してきたエドワードと自分との境界線、つまりドアをしめたのだった。

いきおいに
   乗った豆は
      止まれない(季語なし)
というわけで正面激突。

中からはこらえきれないとでも言うようにの笑い声がしていた。
「に、兄さん。大丈夫?」
駆け寄る弟。
(うわー。ボクが今の身体でも嫌だな〜。……ん?あれ?)
側から見ていても今のは経験したくない。そんなことを考えていると何やら違和感が生じた。
「ねえ、兄さん。」
「つう〜、何だよ、アル。」
「ボク、今まで食事中も師匠やさんのところへいたよね?」
「ああ?それがどうしたんだよ?」
アルフォンスは生身ではないため食事の必要がない。だが、旅の途中もダブリスに来てからも食事は兄と一緒だった。だからこそ生ずる疑問。
「ボク、聞かれてないよ。」
「アル??」
「食べないのかって。」
「……あ!?」
そう、同席したものは必ずアルフォンス尋ねる。
『食べないのかい?』
と。あのメイスンでさえもそう聞いてきたのには一言も聞かなかったのだった。
「なんでなんだろ?」



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