タイトル『Black dancer4』
Black dancer4
エドワードとアルフォンスが、部屋にこもっている間、とイズミは台所で夕食の準備をしていた。
今日の献立はホワイトシチューにサラダ(大盛り)、パン、そして肉の山。
イズミはシチューに、はサラダに取り掛かっていた。
「そういえば、今日お医者さんに言われたよ。」
「うん?」
「最近、楽しそうだってね。」
どこか苦笑いをしつつ、嬉しそうに語るイズミ。
「確かにな。」
そんなイズミを微笑ましく見ている。は、イズミが人体練成を行ったことを知る数少ない一人であった。もちろん、そこに至る理由も知っているという貴重な人物でもある。
だからこそ、イズミが弟子たちを自身の子供のように可愛がっていることも一目見てわかった。
多少?スパルタだが。
しかし、それも彼女らしいとイズミは思っている。以前に聞いたことがあったからだ。
『私は弟子をとらない。大衆のためにあれ、と掲げられているのが錬金術だ。でも、私は自分のために、私心のために使った。
それも最大の禁忌を犯した。そんな私に人を教える事など…ない。』
と。最初の入院のときに連絡をうけ見舞いに行ったときにきっぱりと言いのけていた。だからこそ会ってみたかったのかもしれない。そう言っていたイズミの唯一無二の弟子たちに。
まさかあんな弟子たちとは思っていなかったが。まったく…
「も楽しそうだね。」
物思いに耽っていたため急に話しかけられて現実世界に戻ってきた。
「ん?」
「エドたちと一緒の時だよ。」
そう言われて、最近のことを思い返してみる。
確かに、楽しい。あの反応をくるくると変える小さな少年とそこに的確にツッコミを入れる弟の鎧。
「……楽しくないこともない。」
エドワードも素直ではないが実にもそうである。似たもの同士、なのかもしれない。本人たちは即否定しそうだが。
そんなを見つつ、鍋をかき回すイズミ。
がイズミに対して微笑ましく思っているように、イズミもに対してそのように思っているのだった。
(例の事件があることだしねえ。まあ、最近はエドたちに感謝だね。…ん?そういえば)
「よし。できたぞ、サラダ。」
盛り付けも完璧に、それはそれは大きな器に野菜は盛られていた。ちなみに器は半分にしたスイカほど。それが二つほど。
「なあ、、あんた……」
イズミは聞こうかどうか逡巡してしまった。確かにほどの強さなら組み手をしていて気づかないわけはないが、しかし彼らの内情を自分には言うことはできない。
それに気になることはもう一つある。だが、これも自分が聞いてよいものか。
微妙な間が空いてしまい、けれど、発した言葉に代わるものはなく。
ふっ、と苦笑したような息を発する。
「イズミ。本当に変わらないな。……気づいているよ。あの二人のことならね。そろそろ、本人たちも勘付くだろうよ。」
サラダを運びつつなんでもないように言う。
「それとな、イズミ。私な……」
ところかわってここはエルリック兄弟の自室。
「やっぱり気づいていると思う。」
アルフォンスは、考えに考えた答えをいう。
食事の件だけではない。最初のころ、なんだか妙に見られている感じがしていたのだ。先程、兄を組み手に誘いに来たときも最初に話しかけたときに間があった。
それに、先程の師匠の言が本当ならば彼女はイズミよりも強い。そんな人が自分の身体についてわからないわけがない。
そんな様子の弟を見てエドワードも思う。
「そうだなあ。なあ、アル。俺もな言われてないんだよ。」
「……うん、そうだね。」
「「機械鎧」」
エドワードにも思い当たる節はあった。イズミの家ではそれこそ普段着でランニングシャツや短パンを穿いていたりもした。なのにはなにも聞かなかった。
それが、あまりに自然で違和感もなかったため今の今まで思い当たらなかった。
イズミが言ったとも考えられるが。
否、あのイズミはこそこそと人に言うことはないだろう。
「今夜あたりカマかけてみるか」
そして夕食の席。いつもと違い、空席があった。
「あれ?さんは?」
逸早く気がついたアルフォンスは誰にともなく尋ねた。それに答えたのはやはりというか、イズミであった。
「なら2,3日出かけるってさ。」
「え?ずいぶん急なんですね。」
「まあ、あの子もいろいろねえ。」
含みを持たせた言葉にエドたちは気にはなったが、イズミが教えてくれるだろうとは思ってはいなかったのでここでこのことは流れた。
そう、ここでは……
2,3日と言いつつもは帰ってこなかった。
そして出かけてちょうど1週間後の深夜。
店のほうで大きな物音がした。
「なんだ!泥棒かよ!」
イズミを始めエルリック兄弟たちも物音のほうへ行く。と、そこには暗い中にもうずくまっているものがあるのが分かった。
ピクリとも動かず、みなが様子を見守っていたところ、
「…い、ずみ?」
その声は聞きなれたもので。でも数日留守にしていて。そして、今までにないほどの弱弱しいものだった。
そこには、全身、血まみれになり、打撲痕の目立つがいたのだった。
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