タイトル『Black dancer6』

「探しているものは似ているものって、さんもなんですか?」
まさか自分以外にも探しているものがいようとは思わなかったのか、アルフォンスは思わず声を荒げた。
「そう。私も探している。」
表面的には穏やかな声、しかしエドワードは何か違和感を覚えた。
そう。穏やかな声音に隠れている真意、とでもいうのか。本音と建前、とでもいうのか。とにかくの声には何か別のものがかくされているように感じた。
さんも、け…」
「アルッ!!」
勢いに乗ったまま自分たちの探し物を言いそうになっていた弟を咄嗟に牽制をかけて止める。
何かの勘違いかもしれないのだが、エドワードは自分の勘を信じていた。それは、数年前に師匠にとある小島に修行と銘打って置いていかれた日々に培ったものといってもよい。
急に大声をあげて、会話を止めた兄を不思議そうに見るアルフォンス。
そうして、少しずつだが確信をもちつつに問いかけるエドワード。
「お前が、探しているものは本当に俺たちと同じなのか?」
「そうなんじゃない?」
「なぜだ?お前が言った中には姿をかえられるもの、としか出てこなかった。俺たちがそれと同じものを見たのかもしれないが、探しているものがそれと同じとは限らないんじゃないか?」
「……つまり?」
「お前は何を知りたいんだ?」

再び沈黙。だが今回はそれほども重くはなく、どちらかというといたずらが、ばれてしまったかのような気まずい感じであった。今回の沈黙を破ったのはイズミであった。
。たまには正直に聞くことも必要だ。
     そして、正直に話すこともな。お前はちょっと前のこいつらと同じで、背負い込みすぎだよ。」
「背負い込んでなど…」
「いるよ。の場合、自覚が無いんだよ。それこそ倒れるまで、ね。」
幼子に諭すようにゆっくりと、且つ包み込むような包容力を持ってイズミはいう。これは同時にイズミがを大切に思っていることの現われなのだ。イズミにはそういうところがある。相手のすべてを受け入れようとする、それも本人が意識せずに。
こういう、相手を受け入れようとすることは本人が意識をしすぎるとかえって虚偽のようになり相手にも偽善と取られることが多いもの。イズミがそれを自然に醸し出すことが出来るからこそ、多くの子供たちはイズミを慕う。この兄弟、そして、を含めて。

「最近、夢をみる。」
ぽつりぽつりと語りだす

あの日の夢を。そして…

家は小さいながらも伝統武術をもつ一族。その武術はアメストリスの中でも独特の動きであった。だが、残念なことに家は小さい。それゆえにその動きを知るものは少なかった。
他にも理由はあるのだが。

その中で父、母、そして娘の三人家族がいた。
子々孫々に伝えれられる武術は、その子の性別が男であろうと女であろうと関係なかった。その娘も、通例にならい父母から鍛えられて育った。

家の独特な動き…それは、攻撃する動きがまるで舞っているかのようなところであった。軽やかにステップを踏み、くるくると回りつつ相手の攻撃をかわしていく。
そして、その速さは緩やかに見えるようではあるが実際に対峙してみると分かる。速いのだ。目の前でゆらゆらとゆれているかと思い攻めてみたところそこには本人は居らず。
それどころか、いつの間にか背後にいてそのまま止めを刺される。

娘がちょうど免許皆伝になったころ異変はおきた。
娘はいつも通り帰宅した。が、その小さな部屋にいたのは変わり果てた父母の姿。
近寄ってみれば、まだ暖かく
しかしその出血量は望みを捨てるには十分であった。父母の傷は奇妙であった。
直径1センチほどの貫通痕。だが、拳銃によるものであれば、この部屋の大きさからいえばかなり近距離になる。そういう時には傷には多少の火傷が残っているはずである。
なにもなかった。それどころか、もう流れる血もないのか鮮やかにみえる傷口は、きれいなものだった。

そのとき急に背後から人の気配がした。振り向けば、そこには全身ほとんどが黒い女性がいた。髪はウェーブがかかっており長く腰の近くまである。着ている服は大きく胸元の開いた黒いロングドレス。細めのつり目ではあるが美人な部類だった。そして、特徴的なのは胸元のウロボロスの刻印。
反射的に警戒したが、そのときには身体に激痛が走っていた。
反応できなかったのではない。
信じられなかったからだ。
その女の指の先端が、伸び貫いてくることなど。

奇跡的に心臓から少し離れていたため助かった娘は、その女を捜して旅をしているのだった。

「最近の夢はこんなことばかりだ。」
滔々と語る。その表情は限りなく無に近かった。決して、恨みなどもなかった。
「後は…その前のこと。父さま母さまと過ごした日々を。」
このときやっとには表情があった。惨殺時のことを語るときには何もないかのように語っていたのに。

嘲笑、とも過去を羨むとも違う。

形容するなれば、微笑みのような。

「嬉しいのかい?。」
その顔を見つつ尋ねるイズミ。
その問いには答えず、話は再開された。



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