タイトル『blackdancer7』

Black dancer7

『嬉しいのかい?。』
相変わらず、勘の良い。そう感ぜざるを得なかった。嬉しい、そう、思い出すことは嬉しいのかもしれない。
あの、血に沈んだ父さま、母さま。その時の周りに満ちたにおい。
あの、独特なさびたような鉄のにおい。まだ少しぬくもりの残る、身体。けれども、それはすでに身体というにはあまりに不自然な気配で。
それがすでに“物体”となっていることは明らかだった。
それでも、嬉しいと思うのは、異常なことなのかもしれない。

?」
急に沈黙したを訝しげに思い、話しかけるイズミ。
身体の調子が悪くなったかもしれないことを危惧してのことだった。

その様子を見つつ、エルリック兄弟の心中は穏やかではなかった。
のいう人物に心当たりがあったのだ。先端が伸びる云々はともかく、胸にウロボロスの入れ墨。

中央の第五研究所。

自分が“奴ら”に生かされている存在であることを知ったあの場所。

はイズミの呼びかけに応えていた。
「ああ、すまない。ちょっと、思い出していた。」
「大丈夫かい。なんなら話はここまでに…」
途中で止めさせようかと、思い進言したイズミだったがその言葉には首を振り語り続けるのだった。

病院で目が覚めたときには、家の中で生き残ったのは自分ひとりだった。娘はその後、失声症に陥った。
その時、病室で一緒になったのが虚弱で、旦那一筋のある意味最強な肉屋の主婦だった。
その主婦の影響か、娘は声が出るようになり、無事に?退院できた。
(その際、主婦は娘にいつか我が家に遊びに来い、と誘ったそうな。)

そして、娘はウロボロス印だけを頼りに探し続けた。

復讐、ではなく知りたかったのだ。真実と言う名の理由を。なぜ、父母が殺されたのかを。

そうして最近、ダブリスのデビルズネストという酒場に溜まっているものたちの中にその印を持つものがいるという。その情報を確かめるために向かう途中、娘は見たのだった。
見間違えようもないその姿。後姿。でも確信をもって言うことができる。

父親の姿。

その者を追っていくといつの間にか、人気のない路地裏であった。袋小路まで追い詰めて、振り返ったその者はやはり娘の父。
ただ、その時に娘は視線を右下に移した。それは本当に偶然だった。

その偶然がある意味、娘を助けたのだった。
父親の手は刀になっていた。人としての形状を超えたもの。
姿かたちは、間違いなく父。その手は決して人のものではなく。
否、その顔に張り付いた表情までも記憶とは別物で。

その剣戟をよけることは、造作もなかった。が、その容姿は娘の思考を鈍らせるには十分で。
いつもならば、どうということでもないはずの攻撃にも、避けるのに隙が生じてしまうのだった。そして、ヤツは言ったのだ。その姿で、声で、

…』

瞬間、背に激痛が走り、自分でもここまでかと諦めかけたのだが、なぜかそこで攻撃は止み何とか、主婦の家に逃げ込んだのだった。

「これが、事の顛末だ。」

語り終えた後、しゃべるものは誰もいなかった。
30分ほどたったころであろうか、誰からともなくその部屋を出ていったのだった。

誰もいなくなった部屋で少々疲れたのだろう。はベッドに仰向けに一人こぼす。
「切りつけられても、本人ではないと分かっていても、嬉しいものだな。逢えたことは。」


「兄さん。」
の話を聴きつつ中央のことを思い出していたエルリック兄弟。しかも、どうやら、彼らにはありえない能力があるとも発覚。
そこで、疑問が生じるのだった。なぜ…
「なんで、さんなんだろ。」
どこか信じがたいような、上の空のような状態のアルフォンスが呟く。しかし、その質問の解答はエドワードも持ち合わせていなかった。

自分たちが奴らに狙われるのは、“賢者の石”に関わったからだ。そして、中央でそれに関わった者たちが行方不明になっていることも知った。
キナ臭いものが漂っている。

しかし、はそうではない。“賢者の石”には用もなかったはずの武術の一族。
いったい、何故…
「わっかんねえ。わっかんねえけど、に賢者の石の話も中央でのことも言う必要はないな。」
「うん、そうだね。」
関わったものたちの行方不明。そんなことに巻き込む気はない二人なのであった。
「取り敢えず、デビルズネスト。明日あたり行ってみるか。」

ということで、次の日。
「ぬあ〜〜〜〜!」
行くことに決めたエドワードだったが、査定のことを思い出し急遽、南方司令部へ。

その間にアルフォンスは誘拐される、それを聞いた兄は憤慨しつつそのデビルズネストに乗り込むなどなど騒動が続いた。
そして、エドワードはデビルズネストでホムンクルスと名乗ったグリードに衝撃の言葉を聞く。
家は……

「師匠。ちょっといいですか。」
夕飯後にイズミの寝室にその真偽のほどを確かめに行ったエドワード。
「今日、グリードから聞いたんです。家のこと。」
そのことばに、読んでいた本をとじエドワードに向き合った。
「何をだい?」


家は代々、短命な一族、というのは本当なんですか。」








「あ、おかえり。兄さん。」
自室に戻ったエドワード。アルフォンスも、兄が何を聞きにいったのか分かっていたため帰ってきた兄の表情からそれが真実であることが分かった。
「兄さん。」
、な。普通に暮らしていくと人並みな寿命なんだと。」
「……」
「けど、あの動き。独特のあの速さと動きは、身体への負担が大きいんだ。女なら特にな。
そうして、どんどん寿命を削っていく。そういう流派らしい。
あいつも、あの速さで動けるのは15分が限界で………なんだよ、それ。」

少しかすれた、やるせない声音。
うつむきがちなため髪に隠れて見えない表情。きっと、苦渋に満ちているのだろう。それでも、泣きはしない。
「兄さん。」
「あと、寿命が数年って、なんなんだよ、それ。」


どれほどの沈黙がこの部屋を包んでいるのだろうか。どれほどの時間が過ぎたのだろうか。
答えもない、兄の独白。真実。そして、彼女に必ず訪れるはずの、確定された未来。

「兄さん。僕は肉体がなくて、これから先、どうなるかもわからない。」
「………」
「それでも、うん。違うね。だからこそ生きている時間の貴重さがわかるよ。きっとさんもそうなんじゃないかな。」
弟の身体、魂のみの鎧。食事も睡眠もなく、それでも“生きている”弟。きっと元にもどしてやる。そう言いつつも不意に襲うモノ。もう、手立てはないのではないか。
それでも、少しずつでも必ず進み続ける。そう決めた。だからこそ、
「中央にいくぞ。そして、必ず手がかりを掴もう。
今度ここに来るときには、生身の身体でと会おう。」

そうして、兄弟は旅立つ。中央へ。



数日後。イズミの家で未だ、療養中の
その日は、青空がどこまでも澄んでいて、雲ひとつなかった。だからもベッドから起き上がり窓を開け外の景色を眺めていた。
と、その時部屋に入るもの――イズミ――があった。
「どうだい、調子は?」
「……考えていた。」
「何をだい?」

「なぜ、お前が私を見逃したのか、だ。」


「へー、どうしてわかったのかなー?結構、自信があったんだけど。」
そうして、イズミの形をしていたモノは髪の長い、露出の多い服装をした少年へと姿を変えた。
その露出した左太ももにはウロボロスの刻印。
「わかるさ。
イズミはそんなに醜い姿ではないからな。」
不敵に微笑む
「ふーん、まあいいや。あんたどうせここで死ぬから。っていうかあんたの役目はさ、もう終わったんだよ。」



その日の昼。昼食を持ってきたイズミはそこで物体を発見することになる。
そう、すでに冷たくなっているだったモノ。
その表情は不敵に微笑まれたままだったとか。



ところ変わって中央の地下。様々なケーブルが交差する所。そのすべてが集中する場所に座するものがいた。
「エンヴィーからの連絡はあったのか。」
「はい、お父様。終わった、との連絡が。」
「ふむ。」
“お父様”と呼ばれるものと、の回想に出てきた女。
「お父様、なぜ、あの娘を生かしておられたのですか。」
「……さがれ、ラスト。」

質問を発しつつも、お父様に下がれと言われれば、二もなく従うラスト。この人物こそがウロボロス印のもの達のなかで中心的な人物であることは容易に想像できる。


「生かしておいたのではない。使う“価値”がまだあったのだ。人柱に、細切れの真実を与えるという、役目がな。
                  ただ、それだけの駒だ。」



家:その一族は舞踏のような足運びを持つ武術の一族。しかし、なぜかその一族は短命。そして、風のうわさでは彼らの本式は真っ黒な衣装をまとい武術を使う。
      
       一族最後の後継者とされる、も20代にて夭逝したということだ。これにて、家は断絶となった。



Blackdancer fin



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