タイトル『少女よ、マッチ売るよりまず暖をとることを考えようよ。寝床は必要なんだから』

ただ、走る。当てもないけれど。
誰も助けてくれないけれど。
でも私はまだ死にたくないの。捕まるなんてまっぴら。

生きていたい。

どうしても。

だが、女の足は限界を迎えつつあった。それもそうだ。幕府から追っ手をかけられ、碌に休憩も飯も取らずに逃げ続けているのだから。しかも、悪いことに逃げているうちに足を怪我した。怪我自体は浅く、血もほとんど出ていなかった。だから油断した。
そこから黴菌かなにか入ったらしい。炎症を起こしている。その所為で足からは鈍痛が、その上熱まであるらしく視界がぼやけてきていた。
付近を見渡す。
もう夜明けだ。一体何時から走り続けたのかそれも分からない。
それでも、諦めきれないことがある。
心の中に。


生きたい。
死にたくない。


でも実際に誰が助けてくれるというアテもない。とりあえず、路地裏に体を休めよう。少しだけ。
そっと、壁に背をつけると足から力が抜けていった。無意識、無自覚。ずるずると、重力に従い逆らうことも出来ず地面に着く。
もう目を開け続けることもできない。


「おや?あんた何やってんだい。」
「……」
「また、猫を拾っちまったか。名前くらい言えるかい。」
「…っ……」
「無理なら別に」
「…

この時、何故少女が容易に名を明かしたのか。それが熱の所為だったのかどうかは本人にも分からなかった。


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