タイトル『語尾伸ばす奴で、本音を言ってる奴はいない。てかむしろ要注意人物。』

「いや〜、それにしてもさすがの銀さんも角砂糖をわたされるたあ思ってなかったよ。
ところでどこ行くん?」
「……」
「お〜い、また無視デスカ。なんなんですか、コノヤロウ。その気まぐれ具合は。」
はすこぶる機嫌が悪かった。自分が甘党であることは自覚しているしその具合が甚だ一般とは違うこともなんとなくだが知っていた。
なにせ、角砂糖を食用で購入し消化するくらいなのだから。疑念に満ちた目でみられることも異物のような目でみられることもあった。だから大体においてこの嗜好に、
理解を深く求めることはなかった。だが、今回はどうにも不愉快だった。
甘いものを食し、しかもそれを“糖分”と指し“足らない”というくらいだから相当な甘党(自分に匹敵するほどの)と思ったのだ。だから言ったのに。
(あそこまで笑うか?)
そう、は角砂糖を勧めてみたところものの見事に、銀時によって爆笑されていたのだった。それ度合いは店の人に追い出されるほどで。
「どこまで憑いてくるのよ?」
そう銀時はスーパーからずっとについてきている。もうすぐ屯所につくというのに、だ。
「もしもしチャン。言葉は正しく表記しましょ。憑く、だなんて人を幽霊扱いは良くアリマセンヨ。」
「幽霊のほうがまだ可愛いものでしょうが。この天パお化け、あ、違う。ストーカー型自縛霊天パヴァージョン。」
「おいおいおいおい、なんですか?そのいやなもの全部まとめてみました系のは。てか、ストーカーはどっかのゴリラだろうが。」
「はあ?そんなゴリラいるならお目にかかってみたいわ。」
「いる。確実にいる。ほれ、お前もしってんじゃねえのか?」
「何を戯けたことを。」
「ほ〜れ、そこにいるじゃねえか。」
そう言って銀時の指したのは、を真選組に置いてくれた者。真選組において何よりも誰よりも信頼あつい近藤勳。
「局長?」
その言葉を聞き取ってか近藤はたちのほうを向いた。そして開口一番に一言。
「!?貴様!お妙さんだけではなくうちのをもその毒牙にかける気か!、そんな天パから離れなさい!
天パがうつりますよ!!」
「ストーカーゴリラにそんなこといわれたくありません〜。てか、何?うちのって。」
後半部分はに向けて発するのだがそこに当のはおらず、視線を前に移すととことこと近藤の方へ駆け寄っていく。そして嘆きを混ぜてこう言ったのだった。
「局長、そうなんです、この人いきなり私の胸を掴んできたんです。しかも屯所まで憑いて来ようとして。
助けてください。」
確かに銀時はの胸を掴んだ。揉んだ。
が、銀時はそれに対する報いを受けていたはずだが?
「ちょ〜〜っと、この子自分のしたこと綺麗に抜かしてるよ。どうするよ、おい。てかゴリラこっちに来んな。ゴリラ菌が移る。」
「き〜さ〜ま〜、うちの部下にな〜にをしてくれとるんじゃ〜!!!」
「何ってなに!俺も不相応なくらいの報酬を受けたっての!つーか、何!そのうちの部下って!お前、真選組ではたらいてんのかよ!」
「……では局長、私は屯所へ帰ります。」
「うぅわ、きれーにスルー?え?なに?存在無視?泣いちゃうよ、銀さん泣いちゃうよ?」
そんな銀時に振り返りもせず帰るであった。


「で?なに、あいつそっちで働いてんの?」
「お〜。まあな。」
「それがお上からの命ってとこか。」
「お〜。…で?何?お前に興味あるの?」
「さ〜ってと帰るかね。」
「お〜い!今度はお前がこっちをスルーかよ!」

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「ただいま戻りました〜。……土方さん。」
屯所に帰ると待ち構えていたように土方が出てきた。にこやか、とまではいかないがそこそこの会釈程度に笑み土方に戻ってきたことを告げる。
「遅かったな。」
「ええ、まあ。途中性質の悪い天パに絡まれまして。でも局長が居合わせていたので事なきを得ず(厄介ごとは押し付けて)帰ってきました。」
「ふん。近藤さん、がね。」
「何か?」
どうも含みを持たせる言い方には反応する。だが、なんとなく予想はついていた。彼はを疑う。他の誰よりも。
「近藤さんはおめぇを信用してるみてぇだがな、俺はまだだ。大体、賄い方よりわざわざ勘定方を選ぶあたりから生け好かねえ。
真選組からお前は何を得るつもりなんだ?あぁ?」
やはり、と思う。そして同時にこの人を何とかしない限りここでの情報収集もやり難くなると確信する。さて、やり方は二通り。
味方に引き込むためにこの質問を否定しておくか、それとも肯定しておいて信用を得るようにするか。
この人の弱みはなんなのか……
「そうですね。あなたみたいに疑う人がひとりでもいないといけませんよ?こんな情報屋崩れを真選組の中枢に入れているんですから、ね。
近藤さんは誰彼信用しすぎる。良いところでもあるんでしょうけれどね、そういう隙を補う人が必要ですもの。」
「何が望みだ。言っておくが近藤さんがどう言おうがお前が局長に害為すと判断すれば…斬る。」
刀の鍔に手をやる土方。そんな雰囲気をものともせずに顔に笑みを張り付ける
「いやですねぇ。私は鏡になりたいだけですよ〜。好意に関してはそれなりの好意を返します。悪意にも、ね。
あなたが疑うというのならそれを陥落させてみるのも面白い気がしますけど。それは、やめときましょう〜。

近藤さんが私を信頼している限り私はあなた達に害は為さないの。この組織の頭が信頼してくれている限り、有益なことはしても害は与えない。
これでも情報を扱ってきたのだから、そういうところはきっちりしてないとっていうのが身に染みてんのよね。
それじゃあね、マヨラーさん。」
どこまで本気か分からないような調子で去っていく。それを苦虫を潰したような表情で見送る土方。そしておもむろに柱に向かって問う。
「で、どうなんだ。あいつのどこまでが本気なんだ?総悟。」
「いやですぜ、土方さん。気付いてたんすか?
に関しては少なくとも俺達に害は与えないでっせ。“鏡”たぁよく言ったもので、確かにあいつにゃぁそんな節がある。だからこそ、の情報を信頼しているやつぁ多いんでさぁ。」
「……」
「ただ、腹に何か抱え込んでいるのは確かみたいでさぁ。」
「何か、か。」


自室兼仕事場に戻ってきたは角砂糖を一つ口に放り込む。
は勘定方という名目だが、一般のところへは行かず自室で仕事をするように言われている。への仕事は一旦本当の勘定方を通ってからやってくるのだった。
真選組の情報を極力漏らさないために。重要な書類を見られないように。実際、回ってくる仕事は簡単なものが多かったがの処理能力が慣れると共に早くなってくることから周りの評判も
上々だった。
が、やはり実際のところに対して普通どおりに接するのは近藤と沖田くらいなもの。土方は疑惑をもって接するが、それも実はいいほうだったりする。他のものは遠巻きにしているからだ。
用は仕事に関する評価と自身のものとは別物ということなのだが、
「や〜っぱり、あの人どうにかしないと動きにくいな〜。沖田も信頼全部ってわけじゃあないしね〜。というか、近藤さんが信頼しすぎなんだよな〜。」
というのがの現状に対する感想だったりする。
机の上に目をやると、出掛ける前より5枚ほど書類が増えただけ。目を通してみるとどれもこれも雑務。20分もあれば片付くものだった。
「でも、あれくらいのが良いのかもね。局長さんみたいだとそれに慣れそうで怖いしね〜。」
実のところ自身、勘定方で働くことが出来るなど思ってもみなかった。だからこそ、近藤の言っていることが本心かどうかを図るために、こういう条件を出したのだ。
「お人好し、だからな〜。…それを裏切ることはしないよ。これはホントなのよね。ってことだから、あなたもご苦労さま。」
そう天井に向けて話す。そこには、土方から密命を受けていた山崎がいたりする。
かたことという音を聞き、は山崎が遠くへ行ったのを知る。
(とにかく、何で沖田が苗字を知っていたかは分かった。手配書、か。


知られているはずはないのだ。例え幕府であっても。私の苗字なんて。出所として考えられるのは一つ。“あの人”。やっと合間見えるのかしら、ね?)

真選組の誰にも、先程の銀時にも見せたことのない表情では思案に耽る。
そうして、もう一かけら角砂糖を放り込み、雑務を片付けていったのだった。


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