タイトル『自分のことなんてホントの所分かる人は少ない』

『鏡みたいになること。それが、情報を売るか否かの決め手だよ。』
そう言ったのはあの人。
『自分の人格を変える、とまでは言わない。相手に同調するように、相手の些細なところを見逃さないように。
自分を押し殺し相手を“映す”。』
今の人格形成に少なからず寄与したあの人。
『でもね、。もし、万が一そうすることができない相手が居るとしたら、それは“本物”だよ。』
一体、何の本物だったのか……それを教えてはくれなかった。


お母さん。







『鏡の葛葉』
はここで、この男からその名が出てくることなど予想していなかった。
一瞬の驚愕、後、激怒。
言われたくなかった。鏡になることなど。
だが、が今まで
“好意には好意、悪意には悪意”
これを体現してきた。一種の刷り込みのように逃れたいと思っているのに逃れられなかった。どうしても。
だから、余計に比べれられたような発言に憤りを感じた。
それが隙を生んでしまったのだった。

視界が鮮明になるにつれは自身に何が起こったか、ゆっくりと自覚していった。
おそるおそる、口元に手をやる。
(湿ってる。)

そう、知るやいなや驚愕のあまり降ろしていた短刀をもう一度銀時のほうへ振り下ろした。
眼を見開き、片手を口にやりもう一方の手には短刀。
その様子に銀時は、
「まぁ、俺はそっちの方が断然良いけどなぁ。」

自身に短刀が向かってきていることなど関係ないように述べたのだった。その際、一切の防御も反撃もなく、愛用の木刀は下に降ろされたままだった。

「銀さん!!」
叫んだのはおそらく新八。その声と同時にがちゃんと銃を構えるかのような音がした。


もう一度、鈴の音。




「あんた、一体何なの?」
そう言ったの表情は、怒りも驚愕もなくただ、ただ、泣きたいのを無理やり押さえ込んでいるような顔であった。
「何で。どうして、なんで。」
意味を成さない言葉たちをただただ紡ぐ。
「俺ぁ、坂田銀時。万事屋やってるただのプータローだよ。
まあ、なんつーか、今現在家賃溜めすぎてて、糖分をとらなきゃあ生きていけねぇ。糖尿予備軍。
で、お前に興味持ってるかぁっこいいお兄さんだな。」

ぽかんと、銀時を見つめる。その視線を自分の右腕に向ける。
銀時に触れるか否かで止められている刀。横には頚動脈。紙一重で止められている。

がちゃん。

先程の音がもう一度したかと思うと次の瞬間、けたたましい銃声がはなたれた。
「か、神楽ちゃん!!いきなり何してんの!お店破壊する気?」
「マッタクネ、コノチャイナ。イキナリナニスル!」
「おいおいおい、修繕費は家賃に上乗せさせてもらうよ。」
音源は神楽の傘。最初は銀時に向かうに向けられていたのだが、今回の照準は…
「ちょ、おい!!神楽!!お前、いきなり何すんだよ!
ってか、当たる!今、マジに狙っただろ、てめえ!」

「うるさいアル。何自分を美化してるカ。お前なんて、まだ、おしめもとれていない、ヘタレ男。略してまだおで十分ネ。
しかもまだおの分際でいきなり接吻か。こうやって、今の江戸は腐りきってくるんだヨ。」


「「「「あ。」」」」

いち早く、銀時の行為の不合理に意見を述べたのは意外にも神楽であったとか。当人のですら差し置いて。


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「しかし、吃驚したな〜。銃声の通報があったと思ったらそこは

そこには、原型をとどめていないヤツがいた、とはなあ。
あははははは。」
その後、スナックお登勢の騒動を聞きつけ通報があり、真選組が到着。
そこには袋叩きにあっていた銀時と少しはなれたところにぺたりとしゃがみこんでいるがいたのだった。はその場で丁重に真選組屯所まで連れてこられ現在に至る。
目の前には、近藤が居る。
「そうですね。私も驚きましたよ。」
にこやかに対応する。こうしていると先程までの激情などなかったように見える。が、内心かなり鬱々としていた。


(結局、鏡みたいに対応するのよね。一体、どれがホントウの私なのかしら?
でも、こういうのがもうホントに一部になってる。
コレで、良いってわけじゃない。そういえば、何故あの男の前ではあんな態度だったのかしら。)

「お〜い、?大丈夫か?」
どうやら、何度か呼びかけたらしい。近藤は不思議そうに覗き込む。その距離約10センチ。
「!?え、ええ。ハイ。すいません。」
「いや、別にいいんだが。ところで。」
「はい?」
「ここでの生活には慣れたか?」
「はい。」
「何か不都合なこととかないか?」
「いえ、特には。」
(なんだろう。何かいつもと違うような。…本当は別のことが聞きたいんじゃ?)
「あ〜っと、だな。その。」
「はい。



例の情報のことですね。」
言った瞬間面白いくらい、焦る近藤。持っていた湯飲みをたたみの上に落とし、布巾を取ろうとして足を打ち、自分の足に絡まって倒れるというところまで見せてくれた。
「ホントウに、正直な人ですね。
ねえ、近藤さん。私のところに来るお客さんはね、皆が皆そんなんじゃない。私はその人たちの内面を探りつつ自分の糧を与えてもいいかを吟味する。
容易に信じちゃいけない。人を疑って、疑って、自分すらも否定して、押し殺す。

でも、あなたは今まで見てきたどんな人よりも真正直ですよ。」
近藤のやらかした後始末をしながら、訥々と話す。その横顔は今までに近藤に向けていたのでも、ましてや土方、沖田に向けていたのでも違った。
?」
「だからこそ、私はあなたに全幅の信頼を。
有効な情報を。

自惚れているのかもしれません。でもあなたは私を信頼してくれているでしょ?」
(こんなときでも私の中には“鏡”があるのね。)
はそう自覚していた。
「ならば、何故そのような悲しい顔をする。」
「え?」
(悲しい顔…をしていたのだろうか。自分が。)
「あのなあ、。俺はお前が情報を持っていようがどうかなんて実のところどうでも良いんだよ。」
まるでいたずら小僧のように。秘密をこっそりというように述べる。
「ただ、なんというか。こんな時代だしな。
幸せになってほしい、と思っている。   さて、そろそろ仕事にもどらんとな。も戻らないと机の上に溜まっていると思うぞ。書類。」



その日の夜、真選組屯所からが姿を消したのだった。



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