タイトル『女の本心知りたきゃそれに見合うもの持っておいで』

戻りたいのか、そうでないのか。
いったいどこに戻るというの。どこに、どこへ、誰かが待っているの。
呆然と目の前の男を見る。男は自分の言ったことが私にどう作用しているかも関係ないように酒を煽っている。

「鏡の葛葉、なんで知ってるの?」
「あぁ?そりゃあなあ、俺ら攘夷志士の中では有名だったからな。幕府の人間にも俺らにも、どちらにも付かない完璧な中立派。
気に入った相手にしか情報を売らない。」
「葛葉に教えてもらった。鏡になって、なりきって相手を判断する。」
手の中のグラスを揺らす。氷が解け始めていて上層に水が浮いている。
不思議だ。どうして話しているんだろう。こんな、ヤツに。
手に中には酒。ああ、そうか。今なら何を話してもいつもと違っていても、酒のせいにできる。
視線をグラスから隣の男に移すと、かちあう視線。促される言葉の先。
「そうしていた。これまでも、今までも、これからも。それなのに。」
「それなのに?」

「なんでもない。
戻りたい。あの時に、
まだ、葛葉の居た頃に。

会いたい、話がしたい、お母さん。」
目の前が暗くなる。私は今、何を話しているの?誰に向かって、何を。全てを投げ出してしまいたい。けれど、それが無責任なことは知っている。
それはできない。そんなことをしたくない。
なに?揺れる、揺れている。懐かしい。
甘い、匂いと懐かしい音。


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天井。
見たことのない天井。
頭が重い、酒を飲んだ後はいつもこうだ。
「のど、かわいた。」
体を起す際に触れる手触りの悪い、固い布団。もう片方の手で重い頭を支える。
何だか、不思議な夢を見た気がする。あまり、覚えていないけれど。

「う。」

誰の声。決して私ではない。こんなにも低い声していない。視線を声のほうにおそるおそる向ける。
声も無い。
「……なんだぁ。起きてたのかぁ。っておい。」
坂田銀時。何故に隣で寝ている。
ああ、頭が重いと思ったら枕がなかったのか。お前が一人で占領していたのか。そうか。
「お~、いぶふ。ほあ、なひをふ!」
取りあえず、ヤツの頭の下にある枕を引き抜き顔をふさいだ。
「っておい!いきなりなにしやが、っはあ!」
復活したヤツに、掛け布団を被せその部屋を出る。
まず、現状把握。状況理解!

「やっと起きたんですか、銀さん。もう、お昼も近いです、よ、ってさん!なんで、ここに!っていうか、その格好!」
突っ込み役発揮ですね。てことはここは万事屋。昨日まで特盛のところにいたはず。あの揺れからして負ぶってここに拉致られて。
うん、現状把握はこんなとこかね。
〜、はやいとこ着替えたほうがいいネ。でないと普段モテナイ眼鏡には刺激強すぎるアル。」
で、神楽の言っていることは、と。自身を見下ろすと
「あ〜らら。」
白襦袢だけの姿で、結構着乱れている。これ、一般的に見て何かあったのよね。そう考えるよね。何せ、一晩あの男と共にいたのだから。
そのヤツはどうやらやっと、布団から出てきいるらしい。背後に湧き出る気配。私の背後、そうあと3歩分の距離。
2歩。
1歩。
ゼロ。
「な〜にやってんだあ。」
そこから先がおそらくこの男の災難だったのだと後からそう思った。
「んなぁ!!銀さん、あんた!まさか、さん無理やり連れこんだんすか!てか、一緒に寝てて!」
「見損なったアル!銀ちゃん、腐っているとは思っていたけどこんな最低な性犯罪にまで手を出すほどに堕ちていたアルか!」
「あん??あ〜いや、ほれ据え膳喰わぬは男のは……」
「何にもなかったよ。」
全てを言い切らせてなるものか、と妙に躍起になったのは何故かしらね。
「ホントですか!?」
「ホントアルカ!?」
疑いどころか、信じるかけらも感じられない反応。一体、どういう関係なのこの3人。というよりもこの男も何故に否定の素振りすら見せないの。
「いやいやいや、それはどうかな。あれだよ、。ほら、あれ。」
「何にもない。だって、寝込みを、しかも酔っている女を無理強いするなんてそんなことしないって、信じているもの。」
目線を逸らさず、男の目を覗き込むようにして微笑んで言う。
「え。いや。それは、どう、か、な。
あ〜、着替えてくらあ。」


「で、本当のところどうなんです?さん。」
一段落着いたところで新八がお茶をくれた。私の隣では神楽が酢昆布を食べながら、まったくもって新八と同意見というように私を見ている。
「本当に銀ちゃんのこと信じているアルカ?」
新八のくれたお茶はとてもおいしい。
「あのね、神楽ちゃん。
あなたのことを全幅において信じていますよ、
と、面と向かって純真っぽく言うのがツボよ。そうすれば、大抵の人は嘘も何もできないのよ。
私の本心はどうであれ、ね。」
一瞬の間。
後、爆発。
「あ、姉御おおおおおおおおお」
「いやいやいや、どれだけ真っ黒なんだ、あんた!」
本日の万事屋は朝から絶叫の模様。


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