タイトル『double-faced person?4』

1907年△月○日
軍人、誤射でイシュヴァールの子供を撃つ
本日、午後中央の軍人、伍長が誤ってイシュヴァール人の子供を撃つ。以前から諍いの多かったイシュヴァールの民たちはその場で暴動を起こす。その場はどうにか収まったがこれからの軍がイシュヴァールに対しての措置が厳しいものとなりそうである。

1907年○月□日
イシュヴァールに対し殲滅戦を表明
ことの発端は軍人が誤ってイシュヴァールの子供を撃ち殺してしまったことにある。
また、大総統キング・ブラットレイはこの戦争が長引くようならば、国家錬金術師の投入もやむをえないとも述べている。国家錬金術師の人間兵器としての投入は初めての試みであり、このことに対して市民の錬金術師への見方が偏ることが懸念される。


1907年□月○日
国家錬金術師の投入決定
本日未明、軍は国家錬金術師のイシュヴァール殲滅戦に投入することを決定した。『錬金術師よ、大衆のためにあれ』と掲げている錬金術師に対してそれとは全く反対のことを行う、国家錬金術師。この戦争が終結した折には、どのような終わりになるかは今のところ不明だが、国家錬金術師に対しての反感を持つものもあらわれることが予想される。

 図書館で広げたこの記事に、は深く溜め息をつく。そして、国家錬金術師の写真が添えられており、そこには彼がいた。
今よりもなお幼い感じの、彼。それは彼が戦場に赴く前の写真。その隣には、戦争から帰ってきたときの写真。戦後の写真は本当に小さなスナップ写真。
両者を比べてみて、はまた、溜め息をつく。


 同日、午後。
 東方司令部は、最近、定着化しつつある奇声が放たれた。
「ぬ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「大佐、お静かに。」
 対するホークアイは慣れた様子でロイにツッコミを入れる。
「そうよ。ロイ、仕事中の皆さんの邪魔になるわ。」
 “婚約者”である、は初めて訪れてからちょくちょく、訪ねるようになっている。今では、彼女がロイの婚約者であると
司令部中のほとんどが、誤った認識をしていたのだった。それも無理からぬことかもしれない。は訪れるたびに、手土産として手作りのお菓子を
持っていき周りのものに配っているのだった。
 は口に出して“婚約者”と言っているわけではない。それでも、周りが“婚約者”と認識してしまったのは、一重にロイにも責任はある。

 がお菓子を配っているときに血相を変えたロイがを攫いにくるのだった。いつも、女性関係では冷静に対処しているロイを見ている司令部中の者は、その落ち着きのないロイを見て、最初はガセかと思われていた“婚約者”が本物であるのでは、と確信していったのだ。

「どうぞ、さん。」
ホークアイは、にコーヒーを渡す。今日のの差し入れはキャラメルフロランタン。クッキー生地のうえに、キャラメルとスライスアーモンドを絡めた蜜をのせてこんがりと焼いたものである。キャラメルのなか何かにより、水あめ?のような食感がある。
これは、作るのに結構な手間がかかる。上の蜜は、焦げないように火加減が難しい。そして、一回、下のクッキー生地を軽く焼き、その上に蜜をかけもう一度焼く、とういうものなのだった。
「あ、ありがとう。リザ。」
いつの間に仲が良くなったのか不思議に思っていたロイは、前回の非番のことを聞き相手の男を不憫に思った。
「もう、いい加減に“婚約者”だって認めてくれても良いんじゃない?」
ここが執務室なため、また本性を知っている者しかいなかったために素が出ていた
「認めてたまるか!」
「なんでよ。」
「お前と婚約!?考えただけでもおぞましい!」
「だ・か・ら、何でよ。」
この会話だけを聞けば、痴話げんかのように聞こえるのだから不思議だ。その光景を微笑ましく見つつ、ホークアイは問う。
、一応ここは外なのよ?いいの?素を出して。」
実際、の帰った後にはロイの仕事ペースがいつもより速いのだった。その要因の一つに、このけんか?がある。休憩中に、適度に?大声を出して、そのおかげか仕事で溜まった鬱憤が発散されるのだろう。
「いい。ここには二人しかいないから。」
「「?」」
 は端的だった。一応、注釈を入れるとすればがロイの婚約者になるならば、ロイの評判を下げるようなことはしたくはない。
だからこそ、徹底した令嬢を装う、と決めていたのだった。その点、ここなら二人しかいないため尚且つ、ロイも信用しているリザしかいないため素をみせても良いと判断してのことだった。

そんな心中も同じ女であるホークアイはなんとなく察しがついたがロイにはわからなかった。

「で?なんでよ?」
「は?」
「だから、なんで私が婚約者だと嫌なわけ?」
脱線した話を元に戻す。どうも、そのことはにとって気になることであるらしい。

「お前は、私の過去を知っている。」
青筋たてた顔でロイはいう。
「は?」
先ほどのロイとは反対に、今度はが疑問を持った。
そんな様子のを気にもせずロイはしゃべり続ける。
「考えてもみろ。お前は私の幼いころから知っているのだ。他の誰にも知られていない恥も秘密もす・べ・て・を知っているんだぞ。そんなことがいつ、だれにばらされるかと思うと、おぞましいことこの上ない。
ましてや、結婚だと!?お前と夜を共にするなど、おぞましいこと以外の何ものでもない!!」
一息にまくしたて、急激にその場の温度が下がったのを感じたロイ。その熱源が、意外にも自分の副官からであることを悟ったロイは、冷静になり、自分の発言を反芻した。

かたんっと席を立った
次の衝撃に思わず身を構えるロイ。
だが、意に反しては静かに、退室していった。

「大佐。」
「…わかっている、中尉。今のは完全に私の失言だ。」
「全くです。女性を扱いなれておられていると思っていました。」
「…」





分かっていた。
分かっていた。
分かっていた。
ロイが私を拒否するのは、きっと彼のことを知っているからだ。彼も男だ。自分の矜持に関わることを暴露されては困ることも多いだろう。
でも、
でも、
でも、





私が言うと思ってたのか、本気で?

結局、何のために令嬢を装っているのかまったく分かっていないのね。

これは自分勝手な自己中心的な考えだ。それも分かっている。
自分は何も考えを言っていないのだ。それなのに察してくれ、とは自分勝手なことこの上ない。

司令部内をめちゃくちゃに歩いたせいか、今までに言ったことのないエリアに来てしまった。
それでも止まりたくなかった。
足を止めれば余計なものが出てくることは分かっていた。
それだけは、
それだけは。


止まらずに歩き回る。周りから見たら、きっと競歩のように見えるのかしら?
と思っているあたり、自分の精神も相当きてるな、と冷静に見つめている自分もいる。









どれだけ、歩いたのか角を曲がった途端に何かにぶつかった。
「おっと、大丈夫かね。っっって!!」
咄嗟にロイはの腕をつかむ。必死に抵抗しようとしていたを近くの仮眠室に連れ込む。
「なに。」
「いや、その、先程はすまなかった。失言だった。」
「別に。気にしない。」
いつもよりも素っ気ない言葉。決して、ロイの顔を見ようとしない。顔を上げようともしない。



「気にしない、と言うのならそういう顔をしたまえ。」



ロイもことをよく知っている。だが、それは逆のことも言うことができる。
ロイとは、幼いころの時間を共有しているのだから。
互いが望もうと望むまいと。






はいきなり、暖かなものに包まれたことに驚いた。それが、いつも自分の知っている香りであることに気づいて現状を把握した。





自分の腕の中にいるが身を固くしたのにロイは気づいた。驚くのは自分も一緒だった。まさか、にこのような行動をとるとは。
いつものように、なんとも思っていない相手には簡単にしてきたことだ。それをにすることになるなど。



「何。ロイ。」
「わからん。」
「なに、それ。」
「わからんが、お前、泣き顔を見られたくないのだろう。これなら見えん。」



さっきにも増してが固まったのがロイには分かった。静かに涙を流しているのがわかった。


以前はもっと大声を出していたものだが。
こんな女のように泣くようになったのか。





一通り泣き止んだと思われるころ、ロイは一言、悪ふざけっぽくの耳元に囁いた。

「男馴れしていないようだな、。」




その瞬間、真っ赤になった珍しいを自らの腕の中で見たロイだった。





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