タイトル『紅い月』
深夜に見る満月で偶に紅くなっているものがある。それは、禍々しく見るものに邪な想いを髣髴させるようなもの。
紅い月を見たことは何度かあって、その下で煙草を吸うこともしばしば。
ここは私のお気に入りの場所。木の葉の里を一望できる、そして天気の良い日、星のきれいな日、様々な日に良く煙草を吸う場所。
ここを知っているのは私と、猿飛アスマだけ。私たちはいわゆる友達以上恋人未満、らしい。友人曰くなので確信はない。
私もアスマは好き。
でも、それを言うことはない。だって、言えるわけないじゃない?
「なんでよ。言えばいいじゃない。」
幸いにも私たち以外誰もいない上忍待機場で友人こと夕日紅がいう。ちなみに私たちを友人以上恋人未満としたのは紅だったりする。
「あのねえ、私がどれだけ女らしくないか知ってるでしょうが。」
半分呆れながら応える。
「それが何の関係があるのよ。」
紅を見ながら私はため息をつかざるを得なかった。以前聞いたことがあったからだ。
「だって、アスマの好みって“だいなまいとばでー”らしいわけよ。で、“女らしさ”が必須なんだってさ。」
「あのねえ、あんたはそんなこと気にしていつまでもいつまでも…」
明らかに呆れ果てた紅が頭を押さえ俯く。
実は今の話は半分本当で半分嘘。聞いた話はこうだった。
『アスマの好みは、ダイナマイトバディーの持ち主である紅らしい。』
確かにね、女の私から見ても紅は良い女。大人の女って感じが羨ましい。じろじろと観察しながら私は煙草に火を付ける。
アスマほどではないけど私も良く吸う。
「そんなの気にしててどうするの。いつだってチャンスはあるってのに、ああ、もう!」
「言えないよ。両方だめじゃん、私。」
よく言えば痩せ型なのだが、ようはガリ。女らしさなど皆無。以前、アスマ本人から言われたことある。
「言ったんだよなあ、あいつ。私に向かって。「もうちょっと女らしくすれば男くらいできるだろ」」
「っていわれたんだよね〜。ちゃんvv」
でた。カカシ。途中から妙な声が重なると思ったら。
「そうそう、そう言われたんだよね〜。で?あんたもタイミングよく現れるじゃない。」
カカシはそう言われたときにちょうど居合わせてその後の私の行動も全て見ていた証人。
「ま〜ね〜。ただーいま、紅。」
なんだか今、猛烈に紅に迫ってるんだけど、
「はいはい。で、何時からいたのよ。」
「え〜?愛しい紅が髭クマとちゃんのことを憂いてたところから?」
「つ、ま、り。最初からじゃねえかあ!」
そうして、吹っかけてやったさ。今将に紅の肩に手を置こうとしているカカシの顔面に思いっきり煙を。
「げっほげほ。ひどいなあ、ねえ紅?あら?」
いつの間にやら紅は私の隣に移動していて、呆れた顔でカカシを見ていた。
「人はいう、それを天誅と。」
「何やってんだ?お前ら。」
「アスマ。おっかえり〜。」
相変わらずやる気があるのかないのか分からない。いつもの銜え煙草が、あら?ない?
「ん。」
そう言って火を向けると嬉しそうに煙草を銜え火をつける。なんだって今日に限って吸ってないのかしら。
しかも嬉しそうだし。何なんだろ?
「はあ、うめえなあ。」
「一体なんなのよ。煙草も無しに帰ってくるなんて珍しい。嬉しそうだし。」
「ん〜、意外にも良い素材がそろってんだよなあ。」
意味わかんない。あれ?でも紅もカカシも同意っぽく頷いてる。
「あ、上忍師か。」
そこでようやく合点がいった。なるほどね、良い下忍だった、と。
「ねえ、じゃあそれも記念してどっか呑みにいこ!」
「あら、いいわねえ。でもそれもって?他に何かあるわけ?」
呑みにいくとなれば即乗ってくる紅。他もって、覚えてないのかな?
「今日、アスマの――歳の誕生日。」
あえて年は隠す。うんうん、えらいぞ。と思ってたらすぱんっと後ろから叩かれた。
「いった!何!」
「ナンデ年のところを効果音にするかな?お前は。」
「え?良心?」
すっぱーん、先程より僅かに痛い。
「いったー!さっきより強く叩いた!ちょっと、なけなしの胸が今の衝撃でどっかにさよならしたらどうすんのよ!」
「えー?どれどれ?」
「って、カカシ!触るんな〜!!!」
「…」
ちょっと。触って抵抗して胸から離させて沈黙ってどういうことよ。しかもカカシ、自分の手をまじまじ見てるし。とうとう頭が?
「ちゃん。」
「な、なによ。」
急に真剣な声を出すカカシにちょっと吃驚。
「早く彼氏でも何でもいいからツクンナサイ。その年でこれじゃあ、ちょっとねえ。」
視界の端に即座に部屋の隅に避難した紅とアスマが映った。うん、賢明な判断よ。それ。
「おじさーん、つくねとレバ刺し、あと麦焼酎追加ね〜。あ、それとこの時価って書いてるのも〜。」
ご機嫌な声で最後に爆弾投下。知るものか。払うのは私でも紅でもアスマでもない。カカシなんだから。
結局あの後、私はカカシに向かってソファーを投げつけたのだった。
まったく、こんぷれっくすを抉りやがって。で、紅たちも『『あれはカカシが悪い』』と味方してくれたので今回の呑み代は全部カカシもち。
そう、私にだってこんぷれっくす、というか気にしている事だってある。私、。最近上忍になったばかりでも一応優秀だし、顔もまあ潰れてはいないでしょ。
頭も悪くない。ただ、女らしさに欠ける、加えて胸が絶壁で。お陰で色事の仕事が回らないのは助かるんだけど、アスマに対しても一歩引いちゃうところがあるのも確か。
「はあ。」
ため息だってつくわな。
「なんだ、まだ気に入らないのか?」
それを先程のことと勘違いしたのかアスマが話しかけてくる。
「いんや、別事〜。」
確かにカカシのこともあったが、それよりなによりあーたさまのことで溜息ついてたのよ。って言えればなあ。
「ふうん。だが、まあなんだ。」
「何よ、歯切れ悪いわね〜。」
「お前、惚れてる奴とかいないのか?」
へー、ほー。ほーれてるやつ〜?
って惚れてる奴!?
ぶはあ、っと思わず口に含んだ酒をカカシにかけてしまった。いや、これは不幸な偶然だ。
「…ちょ〜っと、ちゃん?」
こわっ。怒ってる!いや、当たり前か!
「ごめん!わざとじゃなくて!えっととりあえず店の人にタオル借りてくるから。」
おじさんのところに行こうと駆け出したらちょうど顔見知りの中忍がこちらを見ていて笑っていた。何か嫌な感じだったが今はタオルが先、とそこは置いておいた。
「はい、これでいいかい?」
「あ、ありがと〜おじさん。!!」
いきなり何かが割れる音と倒れる音。しかも音源はどうも私たちの呑んでいた場所っぽい。
そっちのほうに走っていくとなんというか先程の待機場と似たような光景。違うのは暴れたのが私じゃなくてアスマってとこと倒れてるのがカカシじゃなくて先程見た
中忍というとこ。
紅もカカシもアスマを止めようともしなかったみたい。というかカカシはいつも通りなんだけど紅が微妙に殺気立ってるのは何故?
「な〜にしてんの、アスマ。ほ〜ら営業妨害だからそろそろやめなさいって。ねえ〜ちゃん?」
否、あんたそれなら最初から止めなさいよ。タオルをカカシの方に放ってアスマに近づく。
「アスマ?」
あー、やっぱこの人優秀な上忍なんだなあ。殺気とかまじだと怖いなあ。
「ほら落ち着いてよ。この子たち怯えてるし。」
「っ!」
え?何?何か悪いこと言った。なんでこっち、そんな目でみるのよ?
「アスって、いたい!」
手首を強引に掴まれて引っ張られた。そのままずるずると店を出る。紅が中忍に何か囁いてるのを最後に見た。
なんなんだろ。ずーっと黙って歩き続けてるよ。しかもこの道って、あの場所に向かってるよね。
「あーすーまー。離してー放してー話してー。」
駄目だわ、反応ない。
「アスマー。そういえばさっき何て言いかけたの?ほら、惚れてる奴云々って。」
「…」
おや?反応あり?歩きが止まったよ。
「あ、月真っ赤。キモチ悪いなあ。」
そうして見上げるアスマ。漸く手を放してくれたので、とりあえず一服。一息すって、煙を肺に充満させる。そんな様子をじっと見てるアスマ。
「月が紅いと人を惑わすそうだぞ。」
やっと話し出したと思ったらなんて脈絡のない。
「へーそれはまた。」
「お前、そんなに胸気にしてんのか?」
「へー…って。う〜ん、まあねえ。」
「何でだ?」
何でってあーた。
いつもなら誤魔化す。逃げる。でも、なせかその時、紅の言葉が頭を回って酔いも手伝って、月も紅いし。何かを起こすという責任をそれらに擦り付けて。
一歩、踏み出してみましょうか?
「好きな人がそういうのが好きなんだって。だいなまいとばでーで、女らしいのが。」
「ふーん、男のためか。」
「そ。」
「してやろうか。」
……何を?
「カカシのいうことにも一理有るしな。試してやろうか、俺が。」
目の前にいる男が知らない人みたいに思えた。体が固まって動かない。手が伸びてくる。その手は私の煙草に行きそれを自身も吸う。そして、
そのまま彼は私に口付けてきた。
「ぅん!!っかはっ!」
口付けと同時に煙を送られ咽てしまった。
「あすま?」
「全部、月のせいだ。」
ああ、ここにも全てを月の所為にして行為に及ぼうとする人が。
私も同じだ。何かの所為にしないと前進できなかった。だから、また、責任を押し付ける。この人と月の所為に。もう一歩進むために。
「うん、して。でもね、その前に聞いて。」
好きって、言わせて。最初だけ。一度だけでいいから。全て何かの所為にして、でもこれだけは本当なの。
「アスマ、好き。」
翌日。
ご機嫌な紅。
どうも聞けば舎弟が新しく増えたとか。それも昨夜の中忍。そしてこれも、あの後アスマに聞いたところあの中忍たちはどうやら私のことで
アスマ達を怒らせたらしい。彼らは一部始終みていて(つまり、カカシに焼酎ふっかけてるところ)言ったらしい。
『ガサツだよなあ。だから彼氏とかいないんだよ。まあ、俺もお断りだけどな。あんな絶壁。』
なーるほど、私がそこにいたら
カカシの比じゃない目に合わしてくれる。
だが、今からはまだ分からない。
ちらりと隣のアスマを見上げる。
大きくなるかもしれないっしょ?ねえ?アスマ。
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